リスティング広告で全部は済まなくてとSEOが必要な理由
前々回の記事
[スライド]情報は社員でもあり… 〜ウェブサイトとSEOの話〜
http://d.hatena.ne.jp/asotetsu/20090327
このスライドの最後に注記した内容を書き足してみます。
[注2] SEOとリスティング広告の補完関係
SEOが手法の一つでしかない、と言われるのはこういう構造の一部分における一手段だから。ただし、SEOを完全に代替する手段はないので、SEOなんて大したことないよ、という場合は、ビジネス戦略上SEOが不要という場合でないと損をすることになる。
情報のやりとりにおいてGoogleを筆頭とする検索エンジン技術は現時点では今のところ一番マシなマッチング能力があり、主要な地位を占めるためにSEOの重要性は今のところ高い。
リスティング広告はSEOに代替しない。リスティング広告は、自然検索結果に対して補完的な地位にある。なぜなら、リスティング広告は、基本的には想定していないクエリに答えられないから。リスティング広告だけで十分に思えるのは、次のようなケース。タウンページ掲載業種における集客。この場合は、顧客のクエリは想定できるのでリスティング広告で十分効果が得られる。しかし、手持ちの情報をなるべく多く供給し、SEOを行うことでユーザに対して違う影響を与えることができる展開が考えられる。ユーザ側からの想定しない問いに対して検索エンジンの能力の範囲で自動で答えられる可能性が高まる流れになると面白いし、そうなっているサイトもある。
リスティング広告は自然検索結果に対して補完的な地位にある、という話なのですけども、「あー、SEOの宣伝ね」と捉えられると思うので、補足しますネ。この話は内製や外注を問わない話です。
そもそも、リスティング広告(というか有料検索結果)というのは、自然検索結果を補完するということで始まっているわけです。SEO抜きにしても。
たとえば、それは有料検索結果だけ検索してみれば分かります。
たとえば、「虫歯にならないようにするためには」と検索してみると、
検索結果は少ないし、適切な答えではないですよね。これが自然検索結果になれば、
ずっとマシです。
これが「虫歯」だけなら、有料検索結果もこうやって多く出てきます。
http://search.yahoo.co.jp/search/ss?p=%E8%99%AB%E6%AD%AF&ei=UTF-8&fr=top_ga1_sa&type=websearch&x=drt
でも…、この中に欲しい情報ページがありますかね?
いまさらながら、有料検索結果と自然検索結果の違いですけども、こういうことなんです。
有料検索結果は、想定した検索ワードに対してしか答えを出さないし、答えも提供者の想定の中でしかないんですヨ。
ところが、ボクらはもっといろんなことを知りたいし、実際にいろいろ調べています。それらの一部にしか答えられないのがリスティング広告であり、リスティング広告がカバーできない領域をカバーしようとしているのが自然検索結果なんです。
有料検索結果に対して相互補完的な位置にいるのが自然検索結果です。
念のためですが。有料検索結果と自然検索結果のどちらがエライかということはなくて、それぞれ特性が違うだけです。有料検索結果はサービスを探すには便利ですし、自然検索結果はそれ以外までいろいろと調べられるので、相互補完の位置にあります。
とはいえ、SEO屋のボクらも自然検索結果に載せてくるのを支援するサービスであるはずのSEOも、実のところリスティング出稿と変わらないような、ビッグワード志向であったりします。
何故か?
それは、検索エンジンを中心とする送客ビジネスは、検索数が多く、購買に繋がりやすい、いわゆるビッグワードを中心に広告出稿が進んだからです。
ビッグワードというと、「不動産」とか「美容整形」とか、まあ、検索結果から3クリックくらいで申し込みや購買につながるワードですね。タウンページなどの電話帳業種名や、単品通販の商品名、専門商品の専門カテゴリ名が多いです。これらのワードはビジネスになる(=儲かる)と分かっているのでリスティング広告のクリック入札単価も高くなるわけです。
SEO業界も、リスティング広告の盛り上がりに付随して発展したので、やっぱりビッグワード志向になるんですね。結局のところ、クライアントのニーズがそちらになりますから。
こういうビッグワード中心に考えていると、リスティング広告もSEOも似てきます。相互に代替できたりします。どちらかの検索結果の上位に上げてクリックしてもらって、それを購買にいかにつなげるか、というのを作りこんでいく世界です。
この世界観だと、CTRはどうだ、とか、コンバージョンがどうだ、となってきますから、ブランディング、とか言ってもあんまり通用しません。基本的に、検索結果から何クリックで購買に到達するか、何%が到達するかというダイレクトマーケティング的なメソッドの世界です。
これはこれで、そういう世界で、アリです。儲けのルールが出来ています。
ここで、いやいやウチは『(検索ワードの)ロングテール』も狙っているよ、という話もあるかと思います。
でも、普通に語られている『(検索ワードの)ロングテール』って、たぶん、「ビッグワード+○○」とか「ミドルワード+○○」とか、関連検索で判明するスモールワードの世界でしょう。
それって、ヘッド部の周辺部なんだと思うんですよ。もちろん、これをロングテールと理解することも可能ではあると思いますけども、ヘッド&ロングテールの話は、もう少し深いのだとボクは思います。
たぶん、アマゾンの事例が誤解を招くと思うのです。アマゾンは書籍という超多品種少量で腐らない特殊な商品のロングテールで成功したと(言われる)わけですが、それに応じて、検索に対してもロングテールワードに対応しています。アマゾンは、書名や著者名で検索すると自然検索結果でも出てくるし、必要に応じてリスティング広告も出稿していますよね。ロングテールでの成功例として語られるのですけども、確かに、あれはロングテールでしょうけど、ロングテールの検索ワードで予想できた稀有な例だと思います。
普通のロングテールワードは予想できません。予想できないのが普通のロングテールであって、予想できるほうが例外なのだと思います。1つ1つ予想しても、ロングテール全体をカバーするだけのコストと見合わないというか。
たとえば、アマゾンだって、書名や著者名では検索対応が出来ていても、本から得られる感動とか気付きとか、記載内容について検索では引っかからないでしょう?
ましてや、一般の企業が世の中に提供している商品やサービスが、人々のどのような暮らしの中に溶け込んでいて、どういう気持ちにさせて、どういう悩みを解決し、どういう悩みを解決し残しているか、というようなすべては、到底想定できないんです。
そこから出てくる検索ワードに、事前に想定して対応するのは困難なのです。
それらは、たとえば検索ワードで言うと「不動産 千葉」とかそういう、「歯科医院 松戸」とかそういうのとは違う領域なのです。
もちろん、「不動産 千葉」や「歯科医院 松戸」というのも検索ワードとして大事ですし、それらに答えていくというのも大事です。お客さんが既に必要性を自覚し、必要に駆られて検索し、ラスト数クリックの導線を引くという点で意味があります。これが有用な業種ではどんどんやるべきです。
でも、ここでボクが言いたいのは、それでカバーできていない領域がありますよ、という話で、それは割合忘れられているSEOの部分なんですよ、という話なのです。
しかも、そのカバーできていない領域は、割合、影響力があるんじゃないか、と最近は思うのですね。
検索結果のラスト数クリックを押さえるのとは違う自然検索結果を押さえることで、ネット内の存在感(情報流通シェア)は高まるのではないかと。
確かに、検索結果のラスト数クリックだけを考えるとリスティング広告を出したほうがラクです。自動出稿システムを使うなり、ネット広告代理店を使うなりして、出稿していき、想定できる限りの検索ワードを押さえることは可能です。それで十分な業種も、ビジネスもあります。
でも、たぶん、それだけでは長期的には足りないビジネスもあると思うんですよ。
たとえば、価格.comは製品の使い勝手で検索しても100%ではないですが見つかったりしますよね。これって、価格.comのブランディングに役立っているように思えてならないんですヨ。
ネットのブランディングって、呼吸するようにそのサイトが身近にある状態を作り出すことではないかな、と。ネットの呼吸って検索のことじゃないかな、と。
もちろん、ビッグワードのSEOもこれからも必要でしょう。
でも、そうじゃないSEOもあるなあと思うのが最近のボクの考えなのです。
理想論ではありますが(笑)
これが「リスティング広告で全部は済まなくてとSEOが必要な理由」です。
written by asotetsu Mar 29, 2009