WWDの特集記事を読んで改めてUNIQLOCKを考える
先日、渋谷のHMVに行った時に、面白そうなので見かけたので買ってきました。
WWD for Japan all about 2008ー09 A/W
- 出版社/メーカー: INFASパブリケーションズ
- 発売日: 2008/09
- メディア: 大型本
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ファッションビジネスでのウェブの活用の話で、ユニクロの戦略について特集があって、それをきっかけに改めてQNIQLOCKについて考えました。
QNIQLOCKすげえ、ってのは見たときに思ったわけで、しばらくスゲエ!という印象が続いていたわけです。
他方、賞取ったりしながらも、別にこれでユニクロの服がすぐに売れるわけでもないだろうなあというのもあって、こういうウェブキャンペーンの有効性をどう考えるのかとか思っていたのですヨ。
それで今回、上記の雑誌の特集を読んでいると、
UNIQLOCKを通して、世界中にブランドの認知度を広げることができました。つまり、グローバルビジネスの礎になったと思います。また、話題となるコンテンツを提供できたことが、ブランドのPRに大きく影響しました。今まで、付き合いのなかったような世界中のメディアまでが取り上げてくれました。(p71)
こういう言説自体は「よくある」モノですけど、これは実際にユニクロックのキャンペーンを創り出して、ここまで広めて成功させたとなると意味が違うなと。
試行錯誤もあったと思うんですけど、たぶん最初から日本以外の世界にアピールっていう狙いが強くあったんですよね。だって、そうでなければあんな日本語不要のコンテンツを作る訳ないですから。ダンス、音楽ともにユニクロのイメージと合致させて、しかも日本語での説明が不要なものに作ってある。
こう考えていくと、UNIQLOCKって、これそのものでユニクロの服を売ろう、国内でも海外でも売ろうという発想では全然ない。むしろ、この極めてユニークな試みで、ユニクロのファッション企業のコアな部分を極めて強く世界に発信してみせたことが主眼であって、その結果、日本以外の人たち、特に狙っているセンスの良い人たちの目に留まることが出来たので狙い通り成功ということですよね。
いや、これは凄いな、と。
というのも、ネットってマス媒体と違って、技術的には通信ですし、実のところ通信の特性が残ってるんですよね。何かとというと、ネットで表現することはマスに向かって表現することではなくて、特定の誰かに向けて書くことが出来るんです。ん。えーと、分かりにくいかな。ネットはキチンと特定の誰かに向けて書くと、その特定の誰かにメッセージが届くんです。そういう性質があります。
ネットはキチンと特定の誰かに向けて書くと、その特定の誰かにメッセージが届く? ハァ? みたいに思えるかもしれないですが、ボクは結構これを思っていて、このブログも特定の誰かに書いています。すると、確率論ではあるんですが、ファインダビリティなどをキチンとやると、かなりの高率で届くというのが今のところのボクの感触なんですヨ。
それで、このユニクロックなんですけど、ボクの想像では、このプロジェクト自体は、伝えるターゲットが決まっていたと思うんですよね。名前は分からないけど、世界のファッションのバイヤーやファッションセンスの感度の高い人たちというのが決まっていて、その人たちに届けるための、ユニクロというファッション企業のコアの部分を伝えるユニークなメッセージをつくり(ここも凄いけど)、さらにそれをファインダビリティを考慮してボトルメールのようにメッセージを流した感じではないかなあ、と。
このコミュニケーションの仕方って、ボクら個人と近い目線で、ネット特有のコミュニケーションの仕方に合わせたということだと思うのです。これって凄いことじゃないですか?
というのも、ユニクロといえばいわゆる伝統企業ではないですが、大企業ですよ。普通なら、海外展開となれば大々的に出店だの、海外紙に広告とか、看板とかそういう、いわゆる「グローバル展開します」な話にしてしまうではないですか。
もちろん、そういうのも進めてはいますけど、このユニクロックのコミュニケーションは、大企業としてコミュニケーションするものではなくて、むしろ弱者が世界にアピールする仕方の流儀を取ったということですよね。
ユニクロは、日本では知名度があり大企業で売り上げは大きくあって「強者」に見えますけど、世界的知名度はまったく劣るのですよね。つまり、実のところユニクロは世界の知名度から見れば「弱者」なわけで、それを自覚した上で展開したとなると、これはその覚悟も凄い、と。
ネットのコミュニケーションというのは、マス媒体のように、短期間に何人に見せたか?という観点を使ってマスメディア的に使うことも可能で、それが今のところ主流なんですけど、ボクがネットが面白いなと思うのは違う形なんですよ。
ある特定の相手を想定し(1人ではなくて、数十人から数百人程度)、その相手に向けて必要とされるコンテンツをつくり、その人たちが見つけることができるようにファインダビリティを整備する。そうすると、確率論ながら高率でそうした特定の相手にメッセージを届けることが出来る。そこから次の強いアクションが生まれる。そういう不思議なコミュニケーションがネットではできると思うんです。
そういう不思議なコミュニケーションは、画一的に作ることが出来ないシロモノなので一般化は難しいと思うんですけど、こういうコミュニケーションをユニクロのような企業が社内で決断して推進するというのがされたとすれば(今までのはボクの推測に過ぎないので)、それは凄いことだと思うのです。
そういうカッコイイコミュニケーションを作るためにはどうすればいいかなあと。
written by asotetsu Oct 17, 2008