無料のオファーが最良であるわけがない
集客のオファーとしての「無料」というのが昔から定番であります。
しかし、どちらかというと愚策とされていて、割引とか上級プランをエントリー価格で、とかそっちのほうが良策とされています。
無料で成功した例って少ないんですよね。少しでもお金を頂いたほうがいい。
なぜかというと、
製品(サービス)の価格感とバリュー感の関係
無料にすると多くの場合、顧客の価格感を壊してしまいます。
同時にその製品(サービス)のバリュー感も壊してしまうのですナ。
基本的に、価格=価値、ですから。そういう前提が誰のアタマにもあります。
価格ゼロは価値もゼロ
だから、価格ゼロにすると、価値もゼロに見えるようになってしまうわけです。
もう一つの難点は、無料なら使うという顧客を集めてしまうことですネ。
そういう顧客を集めたくないなら、ターゲットにあったプライシングは不可欠です。
だから、無料でオファーするというのは下策であるわけです。
ここまではセオリーです。
2000年のインターネットバブル時代
特に、2000年のインターネットバブルのあたりは、各社で無料オファーで会員を集めようとしましたネ。
ここで誤解してもらっては困るのは、ネットは無料が当たり前になった、わけではないんです。
当時は、会員を先にどれだけ多く囲い込むかということが最大の目標だったわけです。
今までのビジネスの延長で「囲い込み」という発想が普通でしたし、囲い込めるとも思っていたんですナ。
この目標のために、無料サービス提供、というオファーが選択されたに過ぎません。
それを後押ししたのがチープ革命なのです。チープ革命だから無料なのではなくて、無料にする選択がしやすかっただけなんです。チープ革命は主役じゃありません。
しかし、実際のところは、大規模なサイトの場合、回線代、サーバ代、特に開発の技術者の人件費がガンガンかかっていたわけです。
でも、この時代は、いくら費用がかかろうと、投資家からの資本を投入して会員を集めまくれば、今度はその会員数が巨額のお金に化けたんですナ。会員集めまくった会社を株式公開するか転売するかによって。だから、現金を燃やしながら顧客集めに突っ走ったのが2000年なわけです。
結局は、チープ革命とは言いながらも割安なだけで、お金を燃焼させながら顧客を集めていたに過ぎません。顧客を買い集めていたわけですナ。会員に買い物できたりするポイントを付与する形で集めていたところもあるので、まさにお金で会員を買い集めていたわけです。
今からすると、「お金あげて会員になっていただくなんて、そんなアホなビジネスあるかいな!」というところですが、笑えないのが恐いところ。当時は真剣だったし。それに、今でもわが国ではモバイルでそれやってますナ。歴史は繰り返すのデス。はは。
顧客数に対するインターネット国とリアル国での価値の違いで利ザヤが抜けた
このビジネスのポイントは、顧客数に関して必要以上に株式市場で高く評価されていたがゆえに、顧客を金で買っても、顧客付きで会社を売ると儲かるということで、その顧客の集め方と集めた顧客数をどう活かすかという画をビジネスモデルといってもてはやしていたわけでアリマス(ボクの独断が含まれていますが)。
別な見方をすると、インターネット国で顧客数というものを安く買い集めてきて、それを喜んで高く買うリアル国にまとめて売ってた、と言えますな。
まさに商売の原点で、2点間での価値の差を利用して、その間で取引をして利ザヤが取れるわけですネ。そういうことをする輩が多く増えると、インターネット国とリアル国の間で裁定が進んで、マージンが減りますな。だから、このビジネスは早いもの勝ちだったわけであります。裁定が進むと、利ザヤがぐっと減りますから。
まあもちろん、大半が死に絶えて、一部が生き残って今に至り大手となっているわけです。めでたし。
さて、いま2007年
ところがヒトは忘れやすいのです。この大半が死に絶えたというのを忘れてる。
しかも、どうして無料オファーしていたのか、ということもわかんなくなってる。
だから、最初から何も考えずに無料オファーするサービス業者がいるから驚きなんですヨ。
インターネットは「そういうもの」と思われているフシがある。
それじゃ、サービスが継続出来ないでしょ、と。今や、会員数を抱えて売り抜けられないんだし。
だから、やっぱりセオリーを知らないんですヨ。基本は大事です。
インターネット時代だろうと、Web2.0時代だろうとこのセオリーは変わりません。
無料オファーは愚策である。
なんです。ほかに方法がないときに行う手段なんですヨ。言ってみれば、ファイナルウェポン。これ失敗したらバンザイしかありません。だから愚策なんです。
しかし、ほかに方法がなくて、とりあえず短期間に会員を集めなければならず、しかも、それが高く売れるとわかっていれば、やむを得ず取る方法なんですよネ。ちゃんと大手となったポータルサイトはそれをわかってやっていたはずなんです。だから、形だけマネしてはいかんのです。その本質は何かみていかないと失敗する。インターネットは無料にして会員集めるもんなんだ〜なんて考えてはいかんのです。そこにはちゃんと理屈があるんです。
モバゲータウン
モバゲータウンなんかもまさにそうですヨ。モバイル戦国時代の一等地を占めようという先取り合戦ですネ。
DeNAさんはモバゲータウンを売るわけではなくても、リアル国では会員数は企業価値(=株価)にちゃんと換算されますからネ。ここでも、モバイル国というまだよくわからんものに対して、リアル国との間で会員数の価値のやり取りでマージンが抜けるってことですナ。まだ、モバイルについては、会員の価値の評価が定まっていないのがポイントですナ。
モバゲータウンは広告で運営するモデルですが、広告をクリックするとユーザにポイントが入るというのも素晴らしい。ユーザのつなぎとめをお金で行う仕組みで2000年のネットバブル再来ですナ。きちんと当時のビジネスを研究して流用できそうな仕組みは持ってきているように思えます。偶然かもいれないけど。また、会員数を確保しておけば、具体的にいろいろ展開も出来る(ような気もする)し、一石二鳥以上の作戦なわけです。
だから、この仕組みもちゃーんと考えて仕掛けてある。何となく無料なんてことは決してない訳です。
残る大きな問題 有料に出来るか?
じゃあ、有料で会員制に出来るのか? と尋ねられるとチト困ります。
この無料化の波の中で何が出来るかってのはまだ答えがないのです。
しかし、インターネットだから無料、これは100%間違ってる。
では、どうすればお金が回収できるのか? となると難しい。
しかし、お金を回収する仕組みを作らないと良質なコンテンツプロバイダーが成り立たなくなってしまう。
と、問題を残しつつ次へ、続くかも。
written by asotetsu June 27, 2007
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