ワーディングラボ | 検索エンジンとSEOとネット広告のコラム

長く更新していません。はてなブログに移りました。

AISASで皆考えているけど、それがすべてとは思えない

前回は、

グーグルがなければ出会わなかった二人、というものがグーグルの生み出す価値

という話でした。

そこから、AISASという消費者行動の仮説が生まれたわけです。確かにもっともらしい。

しかし、僕が気になるのは、この流れなんです。

Interest(興味)→Search(検索)→Action(購買)

消費者行動が直線的で単純化されすぎているAISAS

「興味持った、さて、検索だ、見つかった、買うぞ」、って図式は単純すぎやしませんか?

だから、皆、購買に結びつくワードはどれだ?と血眼になったわけです。

でも、こういう形で購買に結びつくワードって凄く限られてるのはご存知ですか?

でも僕にはこのモデルは直線的過ぎるんです。

検索する、という敷居の高さ

逆に言えば、検索するくらいまで興味が高まらないものは検索しないわけです。

検索するくらいまで興味が高まるものって何かというと、

  • コンプレックス(劣等感)解消目的
    • ダイエットのための器具・フィットネスクラブ・食品や、美容整形、審美歯科、お金儲けでビッグに
  • 緊急な必要性
    • カギの閉じこみ、トイレの詰まり、就職・転職、弁護士依頼、引越業者探し、不動産物件探し、葬儀屋さん探し、結婚式場探し、探偵さん探し、花屋さん探し
  • 話題性
    • 新聞とかテレビで取り上げられた、他メディアの広告

こんなところです。

それ以外について言えば、特に具体的にヒトの頭には浮かんでいるわけでないのでキーワードも思いつかないわけで、検索するところまでたどり着かないんです。

すると、検索しないんだから出会いも起きません。当然、サイトにもたどり着いていないんですから購買にも至らないのです。

つまり、興味→検索の過程の敷居が高すぎるんです。

その敷居を越えられるのは、コンプレックス解消とか、緊急な必要性とか、話題性、というものに限られてしまうんです。

しかし、ヒトとサイトの出会いをそういうシチュエーションだけに絞ってしまうというのはあまりに狭いと思うのです。

AISASは検索から購買までが大忙し

そもそも、検索というのは、予想しながら探しています

つまり、検索開始した時点で、結末がある程度、ユーザーも頭の中で予想しているんです。

だから、AISASモデルだと、いかに、検索から購買までを短い線で結ぶか、という効率化で考える訳です。

ウェブサイトの常識として、購買までのクリック数を少なくして、とか、分かりやすい動線(導線)とか言うでしょう? それはこういう思想なんです。

検索するユーザも、頭の中にゴールが見えているだけに、いかにゴールへ最短で行くかを考えています。

だから、ユーザが購買に直接結びつく検索をしそうなキーワードを探して、有料検索結果にせよ、自然検索結果にせよ、そのキーワードでの検索結果で上位に出ているものがクリックされやすいと言われるわけです。なにしろユーザは急いでいますからね。最高額を入札してトップに有料検索結果を出すか、SEOを頑張って自然検索結果でトップにランクするか、となるわけです。

その次に、そのたどり着き先が分かりやすくないといけません。LPOが必要と言われるところです。何しろユーザは急いでますから、どこをクリックすればいいか最適化して分かりやすくしないと逃げてしまいます。

購買ページまで最短クリックで迷わずいけるようにしないと、何しろ、このユーザは効率化最優先ですからね、逃げてしまいます。

納期も本日出荷とか明日出荷でないと待ちきれません。短納期のよそのサイトに行ってしまいます。

AISASで想定される買い物は必需品的な買い物

こう見ると、AISASでうまく説明できるのは、必需品的な買い物シーンと見えてきませんか?

問題解決のために最短で進んでいく

そういうせっかちなお客様に合わせるのが、ユーザビリティであり、サイト設計であるというような。

ネットの買い物はこういうものだ、というような。

ニーズに徹底してフォーカスしているわけです。

実は、Webの常識の中にはこういう前提が、当たり前、として仕込まれています。

もちろん、それはそれで、買い物の一つの重要なシチュエーションではあります。

ウォンツもカバーしないと豊かな買い物経験にはならない

でも、人生ってそんなもんでしたっけ?

ふらっと立ち寄ったところに意外なものが見つかって、そこの出会いから人生変わったりしませんか?

言いたいのは、AISASって直線的だし、効率的過ぎるってことなんです。

ニーズ解決型過ぎるんですよ。ウォンツをもっと加えてもいいし、偶然性ももっとあっていい。

AISASモデルに縛られることなんてない

だから、検索→購買ばっかり考えていると、それに合致したビジネスはいいですけど、そうでないところだとAISASモデルでは集客時点から行き詰ってしまうんです。

効率化効率化だけじゃ、最高に効率的なショップしか生き残れないんです。

でも、ユーザに必要なのは、そういうサイトだけじゃないんです。

また、前も書いていますけども、集客よりも、集客のあとの来訪者とサイトとのエンゲージメント(関係作り)が大事なんです。

そこをAISASだけでやってると、検索でやってきた顧客をいかに逃さないか、ってことばかり考えてしまうでしょ。

そのために、動線(導線)を分かりやすく引いて、購買に至るまでのクリック数をもっとも短くして、となるんですけど、そんな熱いおでんを急いで口に入れるようなことばっかりでいいんですかね? という話なんです。

そういうモデルではなくて、途中で寄り道したけど、最終的にいいお客さんになる、という顧客とサイトがエンゲージメントを結んで行く形がきっとあると思うんです。

理想論かもしれません。

でも、僕は今の常識とされる効率化だけのサイトとは違うあり方も本流の一つだと思って模索しています。

まだ答えはないんですけど。はは。


written by asotetsu June 22, 2007

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